
AIに語られた記述の型が何種類あるかで企業を分けると、3型以下と4型以上の間に段差があった。3型の企業14社は登場試行数の中央値が2、4型の企業8社は5、5型の企業6社は18である。ただしこれは相関であり、型を埋めれば登場が増えるという因果を確かめたものではない。逆に、よく登場する企業だから語られる型が揃った、という説明も同じデータで成り立つ。
企業ごとに、語られた型の数と登場した試行数を対応させた
AIが企業について語った内容は、実績・契約条件・手法・体制・特徴のみの5つの型に分かれる。ある企業について、この5つのうち何種類が語られたかを数えれば、その企業がどれだけ多面的に語られているかの目安になる。
そこで、条件別推薦実験の記述を企業単位に集計し直した。1社ごとに、語られた型が何種類あったかと、その企業が何試行に登場したかを対応させる。対象は、語られた型が1つ以上あった71社である。名前は挙がったが記述がなかった企業は、型数が0となるためこの集計には含まれない。
この2つに関係があるなら、型を多く語られている企業ほど登場も多いはずである。実際にそうなっていた。ただし、その解釈には後述する重大な留保がつく。
先に断っておくと、ここで数えているのは企業側が自社サイトに何を書いているかではない。AIが回答の中でその企業について実際に語った内容である。両者の対応関係は測っていないため、「自社サイトに5つの型を揃える」という話とは別のものとして読む必要がある。
3型以下と4型以上の間に段差があった
表1 語られた型の数と登場試行数
語られた型の数 | 該当社数 | 登場試行の中央値 | 登場試行の最大 |
1型 | 14 | 1 | 2 |
2型 | 29 | 1 | 3 |
3型 | 14 | 2 | 4 |
4型 | 8 | 5 | 10 |
5型 | 6 | 18 | 48 |
条件別推薦実験(2026年8月11日)。人材教育・組織開発領域。555件から企業単位で集計。3AIを横断した値で、AI別の内訳は集計上存在しない。各セルn=3のため件数と中央値で示し、率には換算しない。
1型から3型までは、中央値が1、1、2とほとんど変わらない。最大値も2、3、4にとどまる。ところが4型になると中央値が5、最大が10に上がり、5型では中央値18、最大48になる。
段差があるのは3型と4型の間である。「型を1つずつ増やすほど登場が比例して増える」という形にはなっていない。3型までは横ばいで、そこを超えたところで水準が変わる。
社数の分布も見ておきたい。対象71社のうち、2型が29社と最も多く、1型14社、3型14社が続く。4型は8社、5型は6社しかない。多面的に語られている企業は少数である。
言い換えると、71社のうち57社が3型以下にとどまっている。AIに多面的に語られている状態は、この領域では例外的だということになる。
5型を満たしていても、登場が少ない企業がある
ここで表1の右端を見てほしい。5型の6社は、中央値が18である一方、最大は48である。中央値と最大がこれだけ離れているということは、6社が同じように登場しているわけではないということだ。
集計シートにも、5型を満たしながら登場の少ない企業が存在すると記録されている。つまり、5つの型がすべて語られている状態は、多く登場することの十分条件ではない。
この反例は重要である。「5つの型を埋めれば登場が増える」という言い方をしたくなるが、埋めていても増えていない企業が現にいる。段差の存在と、埋めれば増えるという主張は別のことである。
4型の側も同じである。8社の中央値は5だが最大は10で、こちらにも幅がある。表1が示しているのは各群の代表値であって、群の中の全社が同じように登場しているわけではない。
なお、5型の企業のうち登場が最も少ない社の値は集計シートに記録がないため、どこまで少ないかは示せない。
逆の因果でも、同じ数字が説明できてしまう
表1の関係は、次の2つのどちらでも説明できる。
1つは、型が揃っているから登場する、という向きである。多面的な情報があるほどAIが候補として扱いやすい、という説明になる。
もう1つは、よく登場する企業だから型が揃った、という向きである。登場試行が多い企業は、それだけ多くの回答で語られるため、5つの型のいずれかに当たる機会も増える。中央値18の企業と中央値1の企業では、記述が発生する母数そのものが違う。
本調査は、企業側が情報を整備してから再計測する設計になっていない。したがって、この2つを区別できない。どちらの向きであっても表1と同じ数字になるため、データからは決められないということである。
さらに言えば、第三の要因が両方を動かしている可能性もある。たとえば企業規模が大きいほど、語られる型も登場回数も増えるという構造があれば、両者の関係は見かけ上のものになる。企業の属性は記録していないため、これも確かめられない。
実務への示唆|段差は測定の目安にはなるが、施策の根拠にはならない
第一に、自社が現在いくつの型を語られているかを測る。これは診断の指標としては使える。3型以下にとどまっているのか、4型以上にいるのかは、位置を知るうえで意味がある。
第二に、「型を埋める」を施策目標に据えない。段差の存在は、埋めれば越えられることを意味しない。逆因果を排除できていない以上、投資判断の根拠にするには弱すぎる。
第三に、型の数だけを追わない。5型を満たしながら登場の少ない企業がいる以上、型の数は登場の多さを保証しない。何が足りないのかは、型の数以外の要因も含めて見る必要がある。
第四に、因果を確かめたいなら設計を変える。同じ企業について、情報を整備する前と後で測り直さなければ、この関係が因果なのかは判断できない。現時点で言えるのは、そういう関係が観測されたというところまでである。
この4点は、表1をどう使うかという話である。位置を知る道具としては使えるが、投資の理由づけには使えない。相関を因果として扱った瞬間に、根拠のない施策が正当化されてしまう。
この調査でわかっていないこと
因果は検証していない。前述のとおり、型が揃うから登場するのか、登場するから型が揃うのかを区別できない。第三の要因の可能性も排除できていない。
他業界では検証していない。会計SaaSの遡及判定では記述型別の件数を集計しているが、企業単位で型の数と登場試行数を対応させた集計は行っていない。したがって、この段差が他の業界でも現れるかは未検証である。
企業数が少ない。段差の上側にあたる4型は8社、5型は6社である。この規模では、数社の増減で中央値が動く。
分布の下側が見えない。集計されているのは中央値と最大のみで、最小値や四分位は記録されていない。5型の企業のうち登場が少ない社がどれだけ少ないかは示せない。
企業の属性を持っていない。規模や社歴のデータがないため、「大手だから型が揃う」という説明を検証できない。
AI別の内訳がない。表1は3AIを横断した値であり、AIごとに同じ段差が現れるかはわからない。
記述のない登場を扱っていない。本稿の集計は語られた型が1つ以上ある企業を対象としており、名前だけが挙がって何も語られなかった場合は含まれない。登場と記述は別の事象であり、両者の関係は本稿では扱っていない。
nの制約がある。各セルn=3のため率に換算できず、件数と中央値で示した。
調査概要
表2 本稿で用いた調査
調査 | 実施日 | 設計 | 単位 | 各セルn |
条件別推薦実験(人材教育・組織開発) | 2026-08-11 | 条件語6種×3AI×各3回=54試行(+パイロット6) | 555件/71社 | 3 |
表1は555件を企業単位で集計し直したもの。71社は、語られた型が1つ以上あった企業の数であり、集計シートの該当社数を合計した値である。名前のみが挙がり記述がなかった企業は含まれない。ブロック数が本実験54試行のみに由来するか、パイロット6試行を含むかは集計上特定できない。
判定基準の版と対象範囲:5記述型の判定は判定基準v2.1で行っている。当時の型名は「価格」で、v2.2で「契約条件」に改称されたため本稿では改称後の名称を用いるが、実際に判定されたデータは金額を中心とするものである。
調査対象企業はすべて匿名とし、企業名は記載していない。社数・件数・中央値は実測値である。

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マーケティング・ファシリテーター
株式会社トランジットデザイン代表。 マーケティング伴走、採用・組織のストーリー設計、コンテンツ企画・制作を通じて、企業や地域、組織の見えにくい価値を言語化し、伝わるかたちへ整えることを仕事にしている。事業や組織の背景にある文脈を読み解き、営業・採用・発信などの接点をつなぎながら、実行につながる構造をつくることを得意としている。
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