
生成AIが答えを作る経路は、その場で検索して情報を取りに行く場合と、検索を行わずに答える場合に大きく分かれる。この違いは施策の効き方を変える。私たちの実測では、検索の有無で挙がる会社の順位が入れ替わり、検索なしで2番目に多かった会社が16件から2件に落ちた。本稿は、2つの経路の分け方と、自社がどちらで拾われているかの確認方法を扱う。
クローラーの種類が、経路の存在を示している
内部の処理は外から見えないが、手がかりはある。各社が公開しているクローラーの説明である。
表1 主要AI提供元が公開しているクローラーの用途区分
提供元 | 公開されている用途区分 |
OpenAI | 検索表示のためのもの、モデルの学習のためのもの、ユーザーの操作を起点とするもの、広告審査のためのもの、という区分が示されている |
Anthropic | 学習のためのもの、ユーザーの操作を起点とするもの、検索品質の向上のためのもの、という3種の区分が示されている |
各社の公式ドキュメントの一次確認(確認日2026年8月16日)。OpenAIのクローラー概要ページ、およびAnthropicのクローラーに関するサポート記事による。両ページとも、robots.txtによる制御方法を説明したもので、引用先をどう選ぶかという基準には触れていない。公式ドキュメントは更新されるため、参照時は再確認を推奨する。
用途ごとにクローラーが分かれているということは、収集された情報の使われ方も分かれているということである。学習に使われる経路と、その場の検索に使われる経路は、別々に動いている。
ただし、ここから先は公開されていない。どちらの経路の情報を、どういう基準で回答に反映するかは、どの社も説明していない。私たちが確認した範囲では、引用先の選定基準を述べた記載はなかった。
つまり、外から確かめられるのはここまでである。経路が分かれて存在することは公開情報から言えるが、どちらの情報がどう使われるかは公開されていない。残る手段は、外から結果を測って違いを見ることになる。
どちらの経路で答えるかは、質問によって変わる
では、実際にどちらで答えているのか。これを外から測るために、私たちは検索ツールを渡す層と渡さない層に分けて同じ質問を投げた。人材教育・組織開発の領域で、買い手を装った12シナリオを設計している。
検索ツールを渡した層でも、AIが必ず検索するわけではない。実行するかどうかはAIが判断する。
表2 シナリオ別の検索発動(検索ツールを渡した層)
シナリオ | 購買ジョブ | 試行数 | 検索が発動した試行数 |
A3 | 要件定義 | 10 | 0 |
A4 | サプライヤー選定 | 10 | 10 |
A5 | 検証 | 10 | 3 |
B3 | 要件定義 | 10 | 9 |
B4 | サプライヤー選定 | 9 | 9 |
B5 | 検証 | 10 | 1 |
人材教育・組織開発編 業界調査(2026年7月29日)。判定モデルは1つ(Claude単独)。両層でn≧9の6シナリオに限定した値。検索を渡さない層では構造上ゼロとなるため、この表には含まれない。
サプライヤー選定の質問では、10試行中10試行、9試行中9試行で検索が発動した。一方、同じ買い手の要件定義の質問(A3)では0試行である。質問の種類によって、AIが検索を使うかどうかが分かれている。
興味深いのはB3である。要件定義の質問だが、検索を渡した層の10試行のうち9試行で検索が発動している。それでいて、追跡対象の10社は、両層を通じて1件も登場しなかった。調べていることと、会社名を挙げることは別だと分かる。
経路が違えば、挙がる会社も変わる
表3 検索の有無による登場試行数の違い(追跡10社)
社 | 検索なし層での位置 | 検索なし(母数60) | 検索あり(母数59) |
社A | 1位 | 18 | 18 |
社B | 2位 | 16 | 2 |
社C | 3位 | 13 | 18 |
社D | 4位 | 6 | 13 |
社E | 5位タイ | 5 | 13 |
社F | 5位タイ | 5 | 1 |
社G | -(0件) | 0 | 4 |
社H | -(0件) | 0 | 1 |
同調査。単位は試行数。社の記号は検索なし層の登場試行数の順で、企業の規模や社歴とは無関係である。両層の試行数がほぼ揃う6シナリオに限定した値。追跡対象10社のうち集計に行を持つのは8社で、残る2社は両層とも登場が0件である。この2社は機械的な選定基準ではなく調査者が意図的に加えたものである。
社Bは検索なしで16件だったのが、検索ありでは2件に落ちた。逆に社Dと社Eは伸び、検索なしでは0件だった社Gと社Hが検索ありでは現れている。社Aだけは両層とも18件で動いていない。
とくに示唆的なのが社Eと社Fである。検索なし層ではどちらも5件で同じ位置にいたのに、検索ありでは13件と1件に分かれた。片方の層だけで測っていたら、この2社を同じ評価にしていたはずである。
この対比が示すのは、2つの経路が独立に働いているということである。検索なし層での位置は、検索あり層での位置を予測しない。同じ会社について同じ質問をしても、経路が違えば別の結果になる。自社の見え方を1つの数字で表せない理由が、ここにもある。
2つの経路は、動かし方が違う
ここからは、観測から導いた整理である。断定できる話ではない。
検索を伴う経路は、比較的動きうる。その場でウェブを見に行くのだから、そこにある情報が変われば結果も変わりうる。ただし「変えれば変わる」を私たちは検証していない。施策の前後で測り直した設計を持っていないためである。
検索を伴わない経路は、短期では動かしにくいと考えられる。モデルが情報を獲得する時点と、企業が情報を出す時点にずれがあるためだが、これは仕組みからの推測であって、実測ではない。モデルの内部処理は観測していない。
実務的に言えるのは、この2つを分けて測るべきだということである。検索なしで挙がるかと、検索ありで挙がるかは、別の問いである。
この整理には実務上の含意がある。仮に検索を伴う経路のほうが動きやすいとしても、検索が発動しない質問では、その経路自体が使われない。表2のA3のように、10試行すべてで検索が起きない質問がある。どの質問で検索が起きるかを知らないまま情報を整備しても、届かない場所に投資することになりかねない。
実務への示唆|自社がどちらで拾われているかを確認する
第一に、測定を2層に分ける。検索機能を使わない状態と、使える状態の両方で同じ質問を投げる。手元でできる範囲では、検索を明示的に指示しない質問と、最新情報を調べるよう促す質問を分ける方法がある。
第二に、片方だけの結果で判断しない。同じ会社が、片方の層で上位、もう片方で下位になることがある。
第三に、検索が発動しない質問があることを前提にする。要件定義のような段階では、検索そのものが起きないことがあった。その場での情報更新は、そこには届かない。
第四に、検索が発動しても社名が挙がるとは限らない。B3のように、9試行で検索が発動しながら追跡10社の登場が0件という結果もある。検索の発動と登場は別々に記録する。
この記事でわかっていないこと
モデルの内部処理は観測していない。本稿が測ったのは、検索ツールを渡すかどうかで結果がどう変わるかである。検索を行わない場合にモデルが何を参照しているかは、外からは分からない。
公式ドキュメントの確認範囲は限られる。クローラーの用途区分は各社の公開ページによるものだが、引用先の選定基準は確認した範囲では記載がなかった。記載がないことは、基準が存在しないことを意味しない。
判定モデルは1つである。表2・表3の実測は単一モデルによるもので、他のAIで同じ挙動になるかは測っていない。したがって本稿のタイトルにある「AI」は、この実測の範囲では1つのモデルを指す。
Perplexityをはじめ、本稿で扱っていないAI検索サービスがある。測定対象にも、公式ドキュメントの確認対象にも含めていない。
因果は検証していない。検索を伴う経路が動かしうるという記述は観測からの整理であり、情報を変えた前後で測り直した設計は持っていない。
nの制約がある。表2・表3は各シナリオ10試行前後の規模であり、6シナリオに限定した集計である。
調査概要
表4 本稿で用いた根拠
種類 | 実施日 | 内容 |
人材教育編 業界調査 | 2026-07-29 | 無指名12シナリオ×検索2層/判定モデル1つ/追跡10社/197試行。本稿は両層でn≧9の6シナリオ(母数60対59)に限定した値を用いた |
公式ドキュメントの一次確認 | 2026-08-16 | OpenAI・Anthropicのクローラー説明ページ。用途区分の記載を確認 |
調査対象企業はすべて匿名とし、社の記号による相対表記に統一した。追跡対象10社のうち2社は機械的な選定基準ではなく調査者が意図的に加えたもので、両層とも登場は0件である。公式ドキュメントは更新されるため、引用時は確認日を併記すること。

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