
AIが引用したページを開き、そこに書かれている記述を型に分けて数えた。印刷ECでは、金額や納期といった契約の条件に関する記述が、5つの型のうち上位2つに必ず入っていた。人材教育・組織開発では、価格が5つの型で最も少なかった。さらに、運営者自身が自社の価格に触れた記述は1件もなかった。
何を数えたか|ページを見出し単位で切り、5つの型に分けた
AI検索対策(LLMO/GEO)の実測として、印刷ECと人材教育・組織開発の2つの調査で、AIが回答に引用したページを実際に開いた。各ページを見出しと配下の本文の単位(以下、ブロック)に切り分け、そのブロックが何を語っているかを5つの型に分類している。
型 | 語っている時点 | 内容 |
実績 | 契約より前 | 過去に誰へ何を提供したかの実態 |
契約条件/価格 | 契約の時点 | 金額・納期・数量・支払条件・保証など |
手法 | 提供の最中 | 提供するもの自体の形式や内容 |
体制 | 提供の前後・周辺 | 本体ではない支援 |
特徴のみ | 時点なし | 上記のいずれにも該当しない評価語 |
2つ目の型は、印刷ECでは「契約条件」として金額・納期・支払条件などを含む広い型で判定し、人材教育では「価格」として金額中心に判定している。名前も範囲も違う。
この記事では、2つの業界の構成比を並べて比較しない。対象ページの選び方も、質問の段階も、集計の閾値も違うためである。書けるのは、それぞれの業界の中で、5つの型がどういう順番になっていたかまでである。
印刷ECでは、契約の条件が上位2型から外れなかった
印刷ECのページは2つのバッチに分けて分類している。第1バッチは推奨段階で2件以上引用されたページ、第2バッチは推奨段階での被引用を条件とせずに集めたページである。抽出の条件そのものが違うため、統合せず別々に示す。
判定には2つの基準がある。A基準は優先順位の規則を適用して1つの型に決めたもの、B基準はブロックの主題で決めたものである。どちらか一方だけを示すと像が変わるため、両方を出す。
型 | 第1バッチ A基準 | 第1バッチ B基準 | 第2バッチ A基準 | 第2バッチ B基準 |
手法 | 79(41%) | 95(49%) | 116(27%) | 172(40%) |
契約条件 | 65(33%) | 47(24%) | 231(54%) | 166(39%) |
体制 | 24(12%) | 25(13%) | 44(10%) | 52(12%) |
特徴のみ | 15(8%) | 16(8%) | 16(4%) | 17(4%) |
実績 | 12(6%) | 12(6%) | 24(6%) | 24(6%) |
合計 | 195 | 195 | 431 | 431 |
単位はブロック数。第1バッチは母数32本のうち分類できた31本・195ブロック、第2バッチは母数71本のうち分類できた50本で、うち一般商材47本の運営者自身の記述431ブロック。同人向け商材3本は件数が少なく率を出せないため、この表から外している。
4つの列で、1位と2位が入れ替わる。第1バッチでは手法が最も多く、第2バッチのA基準では契約条件が半数を超える。どちらが1位かは、バッチと基準で動く。
動かないのは、契約条件が4つの列すべてで上位2型に入っていることである。3位以下に落ちた列はない。
第1バッチには、同一テンプレートで作られた導入事例が4本含まれている。型の構成も同一で、そのまま数えると同じ形を回重複して計上することになる。この4本を代表の1本にまとめた28本・183ブロックでの集計も併記する。
型 | 31本 A基準 | 31本 B基準 | 代表28本 A基準 | 代表28本 B基準 |
手法 | 41% | 49% | 42% | 50% |
契約条件 | 33% | 24% | 36% | 26% |
体制 | 12% | 13% | 13% | 14% |
特徴のみ | 8% | 8% | 5% | 5% |
実績 | 6% | 6% | 5% | 5% |
代表28本は、同一テンプレートの導入事例4本を代表の1本にまとめた集計(183ブロック)。
重複を除いても、契約条件がA基準で36%・B基準で26%で、上位2型に入るという位置は変わらない。
第1バッチの契約条件65ブロックには、内訳が記録されている。納期38、金額21、数量・ロット17、配送11、キャンセル・変更8、支払・決済5、保証・再提供3、与信・アカウント1(複数付与あり)。金額そのものより、納期に触れた記述のほうが多い。
人材教育では、価格が5型で最も少なかった
人材教育・組織開発の調査では、指名質問だけで引用されたページを除いた38本を主分析としている。指名質問は対象企業の事例を読み込んだ後に設計しており、そこに寄った材料が混ざるためである。
型 | 件数 |
手法 | 134 |
体制 | 81 |
実績 | 54 |
特徴のみ | 37 |
価格 | 26 |
合計(運営者自身の記述) | 332 |
38ページ・559ブロックのうち、運営者自身について書かれた332ブロックの内訳。
価格は26件で、5つの型のうち最も少ない。運営者自身の記述を分母にすると7.8%になる。指名質問由来のページを含めた全体(52ページ)でも27件で、やはり最少である。
この希少さには副次的な効果がある。指名質問由来を含む分類済み49ページで見ると、5つの型をすべて備えていたページは6本あり、その6本はいずれも価格の記述を持っていた。価格が最も揃いにくいため、これを持つことが5型を満たす実質的な条件になっている。ここだけ母数が49ページである点に注意されたい。
運営者自身が自社の価格に触れた記述は、1件もなかった
26件の価格が、誰について書かれたものかを分けた。
ページの運営者 | ページ数 | 運営者自身の記述 | うち価格 |
調査対象企業 | 2 | 17 | 0 |
同グループの企業 | 5 | 81 | 8 |
他社 | 31 | 234 | 18 |
調査対象企業のページには、価格に触れた記述が1件もない。指名質問由来のページを含めた全体で数えると1件になるが、その1件も資料ダウンロードへの誘導文であり、金額の具体値は書かれていない。
グループ企業の8件は、1社のページに集中している。教育体系の構築で110万円から、研修講師の養成が1人あたり30,500円といった形で、金額が明示されていた。
他社の18件のうち5件は、grop.co.jp の自社訴求枠である。同社は比較記事の中で自社を1位に掲載し、【PR】と表記したうえで研修動画1本34.5万円などの金額を出している。比較記事の運営者が、自社の枠として金額を書く形である。
金額の示し方は4通りに分かれた。金額をそのまま書く、損益分岐となる人数で示す、期間と工数の目安で示す、資料請求のゲートへ誘導する。最後の形をとっているページでは、公開されている本文に金額は載らない。
もうひとつ記録に残っていることがある。パーパスや理念の策定を扱うサービスのページが5本あったが、そのいずれにも金額の記載がなかった。ただしこの5本は、指名質問由来のページを含めた全体(52ページ)から拾ったものであり、うち2本は調査対象企業のページである。上の表とは母数が違う。
解釈|価格が書かれない理由は、業界の性質かもしれない
ここからは当方の解釈であり、実測ではない。
印刷は、部数と用紙と納期が決まれば金額が決まる。買い手は金額と納期を比べて選ぶことができ、売り手も先に出せる。一方、研修や組織開発は、対象人数・期間・設計の深さで金額が変わる。先に金額を出すと、条件の違うものが同じ土俵で比べられてしまう。書かないことには売り手側の合理性がある。
ただし、これは検証していない。価格を書いたページと書かなかったページで、AIの扱いが違ったかどうかを測っていない。書かないことが不利かどうかも、この調査からは言えない。
言えるのは、買い手がAIに金額を尋ねたとき、人材教育の領域では、その答えの材料が運営者自身のページからは供給されていなかった、というところまでである。実際に供給していたのは、グループ企業と他社のページだった。
実務への示唆|AI検索対策(LLMO/GEO)で自社に欠けている型を見る
因果を検証していない以上、施策として断定できることはない。点検の視点として3つ挙げる。
1. 自社のページを見出し単位に分け、5つの型のどれに当たるかを数える。欠けている型があるかを先に把握する。
2. 価格を書かない方針をとっているなら、それが方針なのか、単に書かれていないだけなのかを区別する。今回の観測では、方針として資料請求のゲートに誘導している例と、単に触れていない例の両方があった。
3. 金額に触れる方法は、金額をそのまま書くことだけではない。損益分岐となる人数や、期間と工数の目安という形も観測されている。
この調査でわかっていないこと
1. 引用されなかったページと比較していない。書かれている型と引用のあいだに関係があるかは、相関としても言えない。
2. 印刷ECの「契約条件」と人材教育の「価格」は、名前も範囲も違う型である。構成比を並べて比較していないのはこのためである。
3. 印刷EC第2バッチについては、契約条件の内訳が記録されていない。金額だけを取り出した件数を出せるのは第1バッチのみである。
4. 印刷EC第1バッチと第2バッチは母集団の性質が違う。統合した値は出していない。
5. 引用元を記録できたのはChatGPTとClaudeの2つである。Geminiの引用は、人材教育では1件も記録されておらず、印刷ECではリダイレクタのため元のURLを復元できず対象外としている。いずれも引用がなかったのではない。この状態は調査ごとに違う。Geminiの一般的な性質ではなく、当方の別の調査では引用元が実在のドメインとして記録されている。AIごとの引用値を扱う場合は、どの調査の値かを必ず確かめる必要がある。
6. 人材教育の調査対象企業のページは、指名質問由来を除くと2本しか残らない。この2本から個社の材料量を論じることはできない。
7. 分類した側は、各ページの引用件数を事前に知っている。盲検ではない。
8. 2つの領域、それぞれ1社を起点とした調査である。他の業界で同じ形になるかは測っていない。
9. サイトは更新される。分類したのは2026年8月時点の状態であり、引用が発生した時点の状態とは限らない。
調査概要
項目 | 印刷EC | 人材教育・組織開発 |
対象 | 個社調査で引用されたページ | 個社調査で引用されたページ |
段階 | 第1バッチ=推奨段階に限定/第2バッチ=限定しない | 限定しない |
分類したページ数 | 81本(母数103本/第1バッチ31・第2バッチ50) | 49本(母数52本/うち主分析は38本) |
ブロック数 | 第1バッチ195/第2バッチ431(一般商材・運営者自身の記述) | 559(うち運営者自身の記述332) |
2つ目の型の呼び方 | 契約条件(金額・納期・支払条件ほか) | 価格(金額中心) |
引用元を記録したAI | ChatGPT・Claude | ChatGPT・Claude |
判定基準 | v2.1-W(サイト材料観測用) | v2.1-W(サイト材料観測用) |
観測日・検算日 | 観測 2026年8月16〜18日 | 検算 2026年8月21日 |
この記事は、AI検索対策(LLMO/GEO)の実測調査シリーズの1本です。

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マーケティング・ファシリテーター
株式会社トランジットデザイン代表。 マーケティング伴走、採用・組織のストーリー設計、コンテンツ企画・制作を通じて、企業や地域、組織の見えにくい価値を言語化し、伝わるかたちへ整えることを仕事にしている。事業や組織の背景にある文脈を読み解き、営業・採用・発信などの接点をつなぎながら、実行につながる構造をつくることを得意としている。
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