
AIが企業について語った記述を1件ずつ切り出して分類したところ、実績・契約条件・手法・体制・特徴のみの5つに収まった。人材教育・組織開発で555件、会計SaaSで767件を対象に分類し、どちらの業界でも型を新設する必要は生じなかった。ただし、どの型が多く語られるかは業界で違う。会計SaaSでは、具体的な内容を伴わない「特徴のみ」が全体の30.1%を占めた。
推薦文は、ひとかたまりの文章ではなく分解できる
AI検索で自社がどう見えているかを測るとき、多くの調査は「登場したか」「何位だったか」を数える。だが、登場したこと自体は、その企業について何が語られたかを教えてくれない。名前が挙がっただけで内容がないものと、具体的な内容を伴うものが、同じ1件として数えられてしまう。
そこで、AIの回答から企業に触れた部分を切り出し、その中身を分類することにした。切り出す単位は、企業名の初出から次の企業の記述または話題転換までの連続範囲である。同じ企業が回答内の離れた場所で複数回記述されていれば、それぞれ別の1件として数える。
分類は1件につき1つの型のみを割り当てる。同じ文を複数の型で重複計上しない。これは、複数の型に該当する記述を二重に数えると、件数の合計が実態より膨らむためである。
5つの型は「契約のどの時点の話か」で切り分けている
表1 5つの記述型
型 | 時点 | 定義 | 典型例 |
実績 | 契約より前 | 過去に誰へ何を提供したかの実態 | 導入社数、利用者数、年数、発注者名、業種や規模の実例 |
契約条件 | 契約の時点 | 金銭に関する条件 | 具体額、価格帯、料金体系、見積り条件 |
手法 | 提供の最中 | 提供するもの自体の形式や内容 | 実施形式、期間や回数、構成 |
体制 | 提供の前後・周辺 | 本体ではない支援 | 事前のヒアリング、カスタマイズ設計、提供後のフォロー、専任担当 |
特徴のみ | 時点なし | 上記のいずれにも該当しない性質・評価語 | 「大手」「老舗」「実績豊富」「評判が良い」 |
判定基準v2.1による。当時の型名は「価格」で、v2.2で「契約条件」に改称された。実際に判定されたデータは金額を中心とするものである。
切り分けの軸を「時点」に置いたのには理由がある。最初の版では手法と体制の定義が重なっており、たとえば「提供後のフォロー」がどちらにも該当してしまった。その結果、どちらの型とも決められない記述が無視できない量で生じ、判定が安定しなかった。
そこで、本体の中で起きることを手法、本体の外で起きることを体制と定義し直した。実施形式や構成は手法、事前のヒアリングや提供後のフォローは体制になる。
それでも複数に該当する記述は残る。その場合は優先順位を決めてある。契約条件、実績、体制、手法、特徴のみの順で、上から最初に当たった型を採る。「フォロー込みで1名あたり◯円」のような記述は、体制ではなく契約条件になる。
実績と特徴のみの切り分けも決めてある。数量または固有名詞があれば実績、どちらもなければ特徴のみである。「年間◯◯社の導入実績」は実績、「実績が豊富です」は特徴のみになる。
2つの業界で分類し、どちらも5つの型で足りた
この5型を2つの業界に当てはめた。1つは人材教育・組織開発で、3AI(ChatGPT・Claude・Gemini)に条件語を6種類振った実験の回答である。もう1つは会計SaaSで、無指名の12シナリオ240試行の回答にあとから5型を適用したものである。
2つの調査は設計が違う。AI構成も試行数も質問の型も異なるため、1つの表には置かず、それぞれの単位で示す。
表2 人材教育・組織開発|記述型別の件数(3AI/条件語6種)
記述型 | 件数 | うち数量あり | うち固有名詞あり | うち抽象語のみ |
手法 | 181 | 21 | 43 | 117 |
体制 | 125 | 23 | 10 | 92 |
実績 | 91 | 73 | 6 | 12 |
特徴のみ | 91 | - | - | - |
契約条件 | 70 | 58 | 4 | 8 |
条件別推薦実験(2026年8月11日)。各セルn=3のため件数表記とし、率には換算しない。具体性は1件で複数の値を持つ場合がある。特徴のみは定義上、具体性を持たない。型別件数の合計は558で、これは判定除外3件を含む生の値である。実験全体の集計母数は、判定除外を控除した555件としている。
表3 会計SaaS|記述型別の件数と構成比(Claude単独)
記述型 | 件数 | 構成比 |
手法 | 317 | 41.3% |
特徴のみ | 231 | 30.1% |
契約条件 | 102 | 13.3% |
体制 | 79 | 10.3% |
実績 | 38 | 5.0% |
計 | 767 | 100.0% |
会計SaaS編240試行の回答に5記述型を遡及適用(2026年8月11日)。各シナリオn=10。判定除外に相当する値はなし。
会計SaaS側は767件すべてが5つの型のいずれかに収まり、判定除外に相当するものはなかった。人材教育側では3件が判定除外になっているが、これは判定基準が「企業として数えないもの」と定めているものである。公的機関や自治体、汎用ツール、一般的な手法名、比較サイトやメディア名、そして「実践重視の会社」のような固有名詞でないタイプ分類が該当する。判定基準の定義上、5つの型で分類できなかった記述ではないことになる。ただし当該3件の中身は集計上確認できない。
つまり、型を6つ目、7つ目と足さなければ分類できない、という状況は2業界とも起きなかった。ただし検証したのは2業界であり、3業界目は未検証である。
会計SaaSでは、具体的な内容を伴わない記述が3割を占めた
注目したいのは「特徴のみ」である。これは「大手」「実績豊富」「評判が良い」といった、評価語だけで具体的な内容を伴わない記述を指す。会計SaaSでは231件、全体の30.1%で、手法に次いで2番目に多い型だった。
人材教育側でも91件が特徴のみに分類されている。加えて、他の型でも具体性を欠く記述が目立つ。体制は125件のうち92件が抽象語のみで、数量も固有名詞も伴わない。手法も181件のうち117件が抽象語のみである。
対照的なのが実績と契約条件だ。実績は91件のうち73件、契約条件は70件のうち58件が数量を伴っている。この2つの型は、数字がないと型として成立しにくい。数量も固有名詞もない「実績が豊富です」は、判定基準上は実績ではなく特徴のみに落ちる。
会計SaaSでは、評価語だけの記述が全体の3割を占めた。人材教育・組織開発では、特徴のみが91件あることに加えて、手法と体制でも抽象語のみの記述が多数を占めている。どちらの業界も測っている中身が違うため1つの数字にはまとめられないが、比較の材料にならない記述が相当量あるという点は共通していた。買い手から見れば、それは選ぶ理由にならない。
実務への示唆|自社の記述がどの型に入るかを点検する
第一に、自社サイトや資料の記述を5つの型に振り分けてみる。判定の手順は単純である。金銭条件なら契約条件、過去の提供実態なら実績、本体の外側の支援なら体制、本体そのものの形式や内容なら手法、どれでもなければ特徴のみ。複数に当たったら、この順で最初のものを採る。
第二に、特徴のみに落ちる記述を数える。「実績豊富」「業界トップクラス」「〜に強い」といった表現がどれだけあるかを見る。これらは、数量や固有名詞を足さない限り、実績としては扱われない。
第三に、型の偏りを確認する。手法と特徴のみに寄っていないか、実績や契約条件のように数量を伴う型が用意できているか。どの型を厚くすべきかは業界によって違うため、他社の一般論ではなく自社の業界で測る必要がある。
ただし、これは「型を揃えれば推薦される」という話ではない。本調査が示したのは、AIが語った内容がこの5つに分かれたという事実だけである。
この調査でわかっていないこと
因果は検証していない。企業側が記述を増やしてから再計測した設計ではないため、「この型を用意すれば語られる」とは言えない。観測したのは、AIが語った内容の分布だけである。
業界は2つのみである。5つの型で足りるかどうかを確かめたのは人材教育・組織開発と会計SaaSで、3業界目は未検証である。業界によっては6つ目の型が必要になる可能性が残る。
2つの調査の数字は比較できない。人材教育側は3AI・条件語操作あり、会計SaaS側はClaude単独・無指名シナリオへの遡及適用である。構成比の違いのうち、どこまでが業界によるものかは特定できない。
具体性のデータは片方にしかない。数量あり・固有名詞あり・抽象語のみの内訳は人材教育側にのみ存在し、会計SaaS側では取得していない。したがって「会計SaaSでも抽象語が多い」とは言えない。
判定は人手を含む分類である。人材教育側では3件が判定除外となっており、それらがどの型の件数に含まれているかは集計上追えない。表2の型別件数はいずれも上限として読む必要がある。
nの制約がある。条件別推薦実験は各セルn=3のため率に換算できず、件数で示した。会計SaaSの遡及判定は単一モデルの結果である。
調査概要
表4 本稿で用いた調査
調査 | 実施日 | 設計 | 単位 | 各セルn |
条件別推薦実験(人材教育・組織開発) | 2026-08-11 | 条件語6種×3AI×各3回=54試行(+パイロット6) | 555件 | 3 |
会計SaaS編 遡及判定 | 2026-08-11 | 240試行の回答に5記述型を遡及適用/Claude単独 | 767件 | 10 |
2つの調査は設計が異なるため、件数を合算した値は用いていない。条件別推薦実験のブロック数が本実験54試行のみに由来するか、パイロット6試行を含むかは集計上特定できない。
判定基準の版と対象範囲:5記述型の判定は判定基準v2.1で行っている。当時の型名は「価格」で、v2.2で「契約条件」に改称されたため本稿では改称後の名称を用いるが、実際に判定されたデータは金額を中心とするものである。表1の定義と優先順位、判定除外の範囲は、いずれもv2.1の記述による。
調査対象企業はすべて匿名とし、企業名は記載していない。件数は実測値である。

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マーケティング・ファシリテーター
株式会社トランジットデザイン代表。 マーケティング伴走、採用・組織のストーリー設計、コンテンツ企画・制作を通じて、企業や地域、組織の見えにくい価値を言語化し、伝わるかたちへ整えることを仕事にしている。事業や組織の背景にある文脈を読み解き、営業・採用・発信などの接点をつなぎながら、実行につながる構造をつくることを得意としている。
まずは、現状を整理するところから。
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