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AI検索石村浩延

知名度がある会社ほどAIに出る、は本当か|LLMO/GEOで語られないブランドと検索層の実測

AIに検索ツールを渡すかどうかで、挙がる会社の順位が入れ替わった。検索なしで2位だった会社は16件から2件に落ち、同じ5件だった2社は13件と1件に分かれた。ブランド想起とAI可視性は別に測る必要がある。

AIに検索ツールを渡すかどうかで、挙がる会社の顔ぶれと順位が変わった。検索なしで2番目に多く挙がっていた会社は、検索を入れると16件から2件に落ちた。逆に、検索なしでは同じ5件だった2社が、検索ありでは13件と1件に分かれた。検索を使わずに答えたときに挙がる会社と、検索を伴ったときに挙がる会社は、同じではない。

検索ツールを渡さない層と、渡す層に分けて同じ質問を投げた

人材教育・組織開発の領域で、買い手を装った12シナリオを設計した。購買のジョブ6種類(問題特定・解決策探索・要件定義・サプライヤー選定・検証・合意形成)と、買い手の状況2種類(100名規模の新規導入/1,000名規模の見直し)を掛け合わせたものである。社名は一切含めていない。

これを2つの層に分けて実行した。1つはAIに検索ツールを渡さない層で、AIは検索を行わずに答える。もう1つは検索ツールを渡す層で、実際に検索するかどうかはAIが判断する。判定モデルはClaude単独である。

数えたのは、あらかじめ追跡対象として指定した10社が、回答に何試行で登場したかである。回答に出てきた対象外の会社は記録していない。

なお2つの層は試行数が同じではない。検索なし層が120試行、検索あり層が77試行で、発動が見込まれるジョブへ試行を厚く配分した設計になっている。そのままでは比較にならないため、本稿では両層の試行数がほぼ揃う6シナリオ(母数60対59)に限定した値を使う。

検索を入れると、2番目に多かった会社が16件から2件に落ちた

表1 追跡10社の登場試行数(6シナリオ限定)

検索なし層での位置

検索なし(母数60)

検索あり(母数59)

社A

1位

18

18

社B

2位

16

2

社C

3位

13

18

社D

4位

6

13

社E

5位タイ

5

13

社F

5位タイ

5

1

社G

-(0件)

0

4

社H

-(0件)

0

1

合計(延べ)

63

70

人材教育・組織開発編 業界調査(2026年7月29日)。判定モデルはClaude単独。単位は試行数。社の記号は検索なし層の登場試行数の多い順に振ったもので、企業の規模や社歴とは無関係である。社Eと社Fは同数のため順序は任意。追跡対象10社のうち、集計に行を持つのは8社で、残る2社は両層とも登場がない。全層(120対77)では母数が非対称のため、母数を揃えた6シナリオに限定している。

最も動いたのは社Bである。検索なしでは16件で2番目に多く挙がっていたのに、検索を入れると2件まで落ちた。検索を使わない回答では上位にいるのに、検索を伴った回答ではほとんど挙がらない、ということになる。

逆方向に動いた会社もある。社Cは13件から18件、社Dは6件から13件に伸びた。社Gと社Hは検索なしでは1件も挙がらなかったが、検索ありではそれぞれ4件と1件現れている。

社Aだけは両層とも18件で動いていない。どちらの条件でも上位にいる会社もある、ということである。

同じ5件から、13件に伸びた会社と1件に減った会社に分かれた

表1で最も示唆的なのは、社Eと社Fの対比である。検索なし層ではどちらも5件で、まったく同じ位置にいた。検索を入れると、社Eは13件に伸び、社Fは1件に落ちた。

検索なし層での位置が同じでも、検索を伴ったときの結果は正反対になりうる。この2社を検索なし層だけで見ていれば、同じ評価をしていたはずである。

順位で見ると入れ替わりはさらにはっきりする。検索なし層の上位3社(社A・社B・社C)のうち、検索あり層でも上位に残るのは社Aと社Cで、社Bは下位に移る。代わりに社Dと社Eが上がってくる。

登場は12シナリオのうち3つに集中していた

もう1つ、この調査からわかったことがある。10社の登場は、12シナリオのうちサプライヤー選定の2本と解決策探索の1本にしか発生していない。要件定義、検証、問題特定、合意形成では、どの社も1件も登場していない。

このうち解決策探索は、母数を揃えた6シナリオに含まれない。したがって表1の値には入っていない。社Cの検索あり層は、12シナリオすべてを数えると20件、母数を揃えた6シナリオでは18件になる。差の2件は解決策探索での登場である。

表2 母数を揃えた6シナリオでの検索発動と登場

シナリオ

購買ジョブ

検索あり層n

検索が発動した試行数

登場

A3

要件定義

10

0

なし

A4

サプライヤー選定

10

10

あり

A5

検証

10

3

なし

B3

要件定義

10

9

なし

B4

サプライヤー選定

9

9

あり

B5

検証

10

1

なし

検索が発動した試行数は検索あり層のみの値。検索なし層は構造上ゼロである。登場の有無は追跡対象10社についてのもの。

注目すべきはB3である。検索あり層10試行のうち9試行で検索が発動しているのに、追跡10社の登場は1件もない。調べていることと、社名を挙げることは別だとわかる。

質問の型によって企業名の枠が開閉するという観測は、別の実験(会話継続実験・距離操作実験)でも得られている。ただし2つの調査は一致していない。あちらでは手段が未定の段階の相談で業者名が1件も挙がらなかったのに対し、本調査では解決策探索で2試行の登場があった。調達に近い段階に集中する点は共通しているが、その手前の段階の扱いは食い違っている。

どちらが正しいかは、この2つの調査からは決められない。試行数もAI構成も質問文も違うため、数値を並べて比較すること自体ができない。段階の呼び方が似ていても、相談文の書き方ひとつで結果が動く可能性がある、という限界として記録しておく。

実務への示唆|ブランド想起とAI可視性は別に測る

第一に、検索の有無を分けて測る。同じAIでも、検索を行わずに答えるときと検索を伴うときで結果が変わる。片方だけで測ると、自社の位置を取り違える。社Bは検索なしなら2位、検索ありなら下位である。

第二に、「AIに聞いたら出てきた」を成果指標にしない。どの条件で聞いたかによって答えが変わる以上、条件を書かない測定結果には意味がない。

第三に、検索なし層で挙がらないことを悲観しすぎない。社Gと社Hは検索なしでは1件も出なかったが、検索ありでは登場している。片方の条件で挙がらないことは、もう片方でも挙がらないことを意味しない。

第四に、登場が起きる場所を確かめてから施策を組む。本調査では、登場はサプライヤー選定と解決策探索のシナリオにしか発生していない。それ以外のジョブでの見え方を改善しようとしても、そもそも会社名が出る場面ではなかった可能性がある。

この調査でわかっていないこと

順位が動いた理由はわかっていない。検索なしと検索ありで結果が違うことは観測したが、何がその差を作っているかは測っていない。第三者メディアへの掲載量、自社サイトの構造、指名検索の量といった要因は、いずれもこの調査では記録していない。

企業の属性を持っていない。集計しているのは試行キー、購買ジョブ、買い手の状況、層、企業、記述の型のみで、社歴や規模のデータはない。したがって「老舗の大手が落ちた」「後発企業が伸びた」といった説明は、本調査からは裏づけられない。社の記号は登場試行数の順に振ったものにすぎない。

記録範囲が10社に限られている。回答に登場した対象外の会社は記録していないため、10社の外で何が起きていたかはわからない。表1の合計が層によって違うのも、この10社の範囲内での延べ数である。

判定モデルは1つである。Claude単独の結果であり、他のAIで同じ入れ替わりが起きるかは測っていない。

母数の制約がある。全層では検索なし120試行・検索あり77試行と非対称で、率としての比較ができない。本稿は母数を揃えた6シナリオ(60対59)の値を用いたが、この限定によって12シナリオ中6シナリオ分の情報は落ちている。

因果は検証していない。企業側が何かを実施してから再計測した設計ではないため、「こうすれば検索あり層で挙がる」とは言えない。

調査概要

表3 本稿で用いた調査

調査

実施日

設計

総試行数

判定モデル

人材教育・組織開発編 業界調査

2026-07-29

無指名12シナリオ(購買ジョブ6×買い手の状況2)×検索2層/追跡10社

197試行

Claude単独

検索なし層120試行、検索あり層77試行。本稿は両層でn≧9の6シナリオ(母数60対59)に限定した値を用いた。

判定基準の版と対象範囲:本稿が扱うのは、追跡対象10社が回答に登場した試行数の1点のみである。登場一覧135行に判定除外はなく、控除はしていない。AIが企業について何を語ったかを分類する5記述型の判定基準(v2.1/v2.2)は、本稿では用いていない。

対象企業の選定について:追跡対象10社のうち2社は、機械的な選定基準ではなく調査者が意図的に加えたものである(カスタム型の提供形態を持つ企業)。この2社は検索なし・検索ありの両層とも登場が0件であり、集計に行を持たない2社がこれにあたる。したがって表1の8社の値には影響していないが、対象選定の基準が2種類混在している点は本調査の設計上の限定である。相談文は対象企業の選定より前に確定しており、特定企業への過適合はない。

調査対象企業はすべて匿名とし、社の記号による相対表記に統一した。記号は検索なし層の登場試行数の順に振ったもので、企業の規模・社歴・知名度を表すものではない。件数は実測値である。

石村浩延

Written by

石村浩延

マーケティング・ファシリテーター

株式会社トランジットデザイン代表。 マーケティング伴走、採用・組織のストーリー設計、コンテンツ企画・制作を通じて、企業や地域、組織の見えにくい価値を言語化し、伝わるかたちへ整えることを仕事にしている。事業や組織の背景にある文脈を読み解き、営業・採用・発信などの接点をつなぎながら、実行につながる構造をつくることを得意としている。

まずは、現状を整理するところから。

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