
AI検索対策として挙げられる打ち手には、業界を問わず同じものが効くという前提が置かれていることが多い。実測したところ、その前提は成り立たなかった。AIが企業について語る内容を5つの型に分けて数えると、枠組み自体は2業界とも5型で足りたものの、上位に来る型は業界で違い、同じ業界の中でも買い手が条件を1つ足すだけで型の配分が入れ替わり、さらに同じ条件でもAIによって結果が逆になった。共通化できるのは施策のリストではなく、自社の業界と条件で何が語られているかを測る手順のほうである。
「第三者メディアに載れ」型の助言は、どの業界でも同じ打ち手が効くことを前提にしている
AI検索対策の解説に並ぶ打ち手は、おおむね共通している。第三者メディアに掲載される、導入事例を増やす、構造化データを整える、といったものだ。これらは業界を指定せずに提示される。つまり、AIが企業を推薦する仕組みは業界をまたいで同じであり、したがって打ち手も同じでよい、という前提が置かれている。
この前提が実測に耐えるかを確かめた。測ったのは引用元のURLではなく、AIが回答の中で企業について何を語ったかである。引用されていないことと、推薦の材料になっていないことは別の事象であり、前者から後者を推測することはできない。この取り違えは、私たち自身が過去に一度犯して記事を撤回している。
AIが企業について語る内容は、2業界とも5つの型で分類できた
AIが企業に触れた記述を1件ずつ切り出し、内容によって分類した。用いたのは次の5つの型である。実績(導入数や受講者数などの実施実績)、契約条件(金額・費用に関する条件)、手法(提供する方法論やアプローチ)、体制(支援体制や組織の構え)、特徴のみ(評価語だけで具体的な内容を伴わないもの)。
この5型を、人材教育・組織開発の条件別推薦実験と、会計SaaSの調査回答への遡及適用の両方に当てはめた。会計SaaS側は767件すべてが5型のいずれかに収まり、判定除外に相当するものはなかった。人材教育側は3件が判定除外となっており、これらがどの型にも収まらなかったのか、判定に足る情報を欠いていたのかは、集計上は区別されていない。いずれにせよ、型を新設しなければ大半が分類できないという状況は生じていない。ただし検証したのは2業界であり、3業界目は未検証である。
しかし、上位に来る型は業界で違った
同じ5型で分類しても、どの型が多く語られるかは一致しなかった。2つの調査は設計が異なるため、1つの表には置かず、それぞれの単位で示す。
表1 会計SaaS|記述型別の件数と構成比(767ブロック/Claude単独)
記述型 | 件数 | 構成比 |
手法 | 317 | 41.3% |
特徴のみ | 231 | 30.1% |
契約条件 | 102 | 13.3% |
体制 | 79 | 10.3% |
実績 | 38 | 5.0% |
計 | 767 | 100.0% |
会計SaaS編240試行の回答に5記述型を遡及適用したもの。各シナリオn=10。判定除外に相当する値はなし。
表2 人材教育・組織開発|記述型別の件数(3AI/条件語6種)
記述型 | 件数 | うち数量あり | うち抽象語のみ |
手法 | 181 | 21 | 117 |
体制 | 125 | 23 | 92 |
実績 | 91 | 73 | 12 |
特徴のみ | 91 | - | - |
契約条件 | 70 | 58 | 8 |
条件別推薦実験。各セルn=3のため件数表記とし、率には換算しない。具体性は1ブロックで複数の値を持つ場合がある。型別件数の合計は558で、これは判定除外3件を含む生の値である。実験全体の集計母数は、判定除外を控除した555ブロックとしている。除外3件がどの型に計上されているかは特定できないため、型別の値は上限として読む必要がある。
会計SaaSでは手法と特徴のみの2型で全体の7割弱を占め、実績は5.0%にとどまった。人材教育側でも手法が最多だが、体制125件・実績91件と分散している。
ただし、この2つの数字を並べて「業界で構成比が違う」と断定することはできない。人材教育側の実験は条件語を6種類振っており、条件が型の配分を動かすことが後述のとおり確認されている。会計SaaS側は無指名シナリオへの遡及適用で、AI構成も異なる。業界差と設計差が分離できていない以上、ここで言えるのは「同じ5型で分類しても、上位に来る型が同じではなかった」という水準までである。それでも、打ち手を一律に処方する前提を疑うには足りる観測だといえる。
同じ業界の中でも、買い手が条件を1つ足すと語られる型が入れ替わる
相談文のうち条件を表す語だけを差し替え、他は固定して実行した。無条件の統制群と、実績・費用・地域・体制・手法の5条件である。条件に対応する型の記述は、いずれも増えた。
表3 条件語を加えたときの、対応する型の記述件数(AI別)
対応する型 | AI | 無条件時 | 条件を加えたとき |
実績 | ChatGPT | 4 | 19 |
実績 | Claude | 2 | 14 |
実績 | Gemini | 3 | 7 |
体制 | ChatGPT | 8 | 24 |
体制 | Claude | 1 | 14 |
体制 | Gemini | 2 | 12 |
実績は「実績×規模」を条件に加えたとき、体制は「体制」を条件に加えたときの件数。各セルn=3。
逆の動きもある。手法を条件に加えたとき、契約条件の記述は本実験の当該条件では3AIともに0件だった。条件に対応しない型は、増えないだけでなく押し出される。
動くのは語られる内容だけではない。候補として挙がる企業そのものも入れ替わる。地域を条件に加えた場合、登場した企業は21種類あったが、無条件時の9社と共通するのは3社にとどまり、18社は地域条件でのみ現れた。
同じ条件でも、AIによって結果が逆になった
費用を条件に加えたときの記述型を、AI別に示す。
表4 費用条件における記述型の件数(AI別)
AI | 実績 | 契約条件 | 手法 | 体制 | 特徴のみ |
ChatGPT | 0 | 26 | 10 | 4 | 5 |
Claude | 8 | 4 | 7 | 2 | 2 |
Gemini | 0 | 19 | 4 | 2 | 13 |
各セルn=3。3AIの合算値は集計シートに「参考値。AI間で挙動が異なるため主報告には使わない」と明記されているため、本稿では用いない。
実績の記述は、ChatGPTとGeminiでは0件だが、Claudeでは8件残っている。合算すれば8件という1つの数字になるが、その数字からは「費用を聞くと実績が語られなくなる」とも「費用を聞いても実績は語られる」とも書けてしまう。AI別に分けなければ、どちらが起きているのかを判断できない。
契約条件の記述にも開きがある。ChatGPT 26件、Gemini 19件に対し、Claudeは4件だった。費用という同じ条件に対して、AIごとに何を返すかが揃っていない。単一のAIだけで測って施策を決めれば、他のAIでは前提が違うことになる。
共通していたのは施策ではなく、質問の型で枠が開くという構造だけだった
一方で、3AIが揃った観測もある。会話継続実験と距離操作実験では、経営課題の相談、手段が未定の相談、頼み方の相談という前半3ターンにおいて、会話を積み上げた場合も同じ質問を単発で実行した対照群でも、27回答すべてで業者名が挙がらなかった。業者を教えてほしいという調達の質問に変わったターン4では、いずれの条件でも27回答中26回答に業者名が現れた。
なお、ターン4のAI別の内訳はChatGPT 9/9、Claude 9/9、Gemini 8/9として記録されているが、集計表にAI別の系列が1つしかなく、会話継続と対照群のどちらの内訳であるかが特定できない。したがって、この内訳は一方の条件についての値として読む必要がある。
つまり、業界やAIをまたいで共通していたのは「いつ企業名の枠が開くか」という構造のほうであり、開いた枠に何が入るかは業界・条件・AIで動いた。施策の共通化が難しいのはこのためである。
実務への示唆|打ち手ではなく、測る手順を共通化する
第一に、自社の業界で上位に来る型を実測してから打ち手を決める。他業界の観測をそのまま持ち込んでよい根拠は、今回の範囲では見当たらなかった。
第二に、1つの型に賭けない。買い手が条件を1つ足すだけで、対応しない型の記述は押し出される。自社の強みが実績にあっても、費用条件の相談では別の型が前に出る。
第三に、AI別に見る。合算した1つの数字は、AI間で逆になっている現象を覆い隠す。
なお、実績と契約条件は数量を伴う記述の比率が高かった(実績91件中73件、契約条件70件中58件)。数値を持つ情報を用意することには意味がありそうだが、これは観測された関連であって、数値を書けば語られるようになるという因果を確かめたものではない。
この調査でわかっていないこと
因果は検証していない。いずれの調査も、ある時点でAIが何を語ったかを観測したものであり、企業側が施策を実施してから再計測した設計ではない。したがって「こうすれば語られる」とは言えない。
業界は2つのみである。5型の枠組みが3業界目でも成立するかは未検証であり、印刷EC領域のデータは推薦軸での分類が済んでいない。
業界差と設計差を分離できていない。条件別推薦実験は3AI・条件語操作あり、会計SaaSの遡及判定はClaude単独・無指名シナリオである。両者の数字の違いのうち、どこまでが業界に由来するかは特定できない。
nの制約がある。条件別推薦実験は各セルn=3のため率に換算できず、本稿では件数で示した。会計SaaSの遡及判定は単一モデルの結果である。
記述型の判定は人手による分類であり、人材教育側では3件が判定除外となっている。除外の理由と、それらがどの型の件数に含まれているかは、集計上は追えない。また、観測できなかったことと存在しないことは区別している。本稿で0件と書いたのは、当該実験の当該条件で該当する記述が確認されなかったという意味であり、他の条件や他の調査でも起こらないことを示すものではない。
調査概要
表5 本稿で用いた調査
調査 | 実施日 | 設計 | 単位 | 各セルn |
条件別推薦実験(人材教育・組織開発) | 2026-08-11 | 条件語6種×3AI×各3回=54試行(+パイロット6) | 555ブロック | 3 |
会計SaaS編 遡及判定 | 2026-08-11 | 240試行の回答に5記述型を遡及適用/Claude単独 | 767ブロック | 10 |
会話継続実験 | 2026-07-29 | 3系列×3AI×各3回=27会話 | 108ターン | 3 |
距離操作実験(対照群) | 2026-07-29 | 同一質問を独立実行 | 108回答 | 3 |
条件別推薦実験のブロック数が、本実験54試行のみに由来するか、パイロット6試行を含むかは集計上特定できない。
判定基準の版と対象範囲:5記述型の判定は判定基準v2.1で行っており、当時の型名は「価格」である。v2.2で「契約条件」に改称されたため本稿では改称後の名称を用いるが、実際に判定されたデータは金額を中心とするものである点に注意されたい。
調査対象企業はすべて匿名とし、相対的な表記を用いた。件数・企業数は実測値である。

Written by
マーケティング・ファシリテーター
株式会社トランジットデザイン代表。 マーケティング伴走、採用・組織のストーリー設計、コンテンツ企画・制作を通じて、企業や地域、組織の見えにくい価値を言語化し、伝わるかたちへ整えることを仕事にしている。事業や組織の背景にある文脈を読み解き、営業・採用・発信などの接点をつなぎながら、実行につながる構造をつくることを得意としている。
まずは、現状を整理するところから。
無料相談受付中。1〜2営業日以内にご連絡します。