
AIが回答に引用したURLと、AIが回答を作るために読んだURLは、別のデータである。そして、その2つをどこまで記録できるかはAIごとに違う。私たちの測定では、あるAIは読んだURLを完全に記録し、別のAIは引用と同じものしか返さず、もう1つのAIは読んだURLを一切記録しなかった。この状態でAI間の引用数を比較すれば、出てくる差はAIの性質ではなく、測り方の産物である。
本稿は引用の話であり、推薦の話ではない
先に範囲を区切っておく。本稿が扱うのは、AIがどのサイトを読み、どのサイトを引用として示したかという引用軸の観測である。AIがどの企業を挙げ、何を語ったかという推薦軸の観測とは別のデータであり、本稿の数値を推薦の多寡として読んではいけない。引用されていないことは、参照されていないことも、推薦されていないことも意味しない。
データは、人材教育・組織開発領域の条件別推薦実験(54試行+パイロット6、3AI)の回答から、引用軸だけを集計し直したものである。
この記事を書くのは、私たち自身が引用軸の測定でつまずいてきたからである。モデル間の引用集計に食い違いが出て、原因は各モデルの出力形式の違いだった。回答本文からURLを抽出する方式では、引用をメタデータで返すモデルの分が構造的に取りこぼされる。
「読んだURL」を記録できるかどうかが、AIごとに違う
表1 AI別の引用・取得の記録状況
AI | 引用ユニークドメイン | 引用 延べ | 取得ユニークドメイン | 取得 延べ | 取得URLの記録 |
Claude | 51 | 277 | 80 | 495 | 完全記録 |
Gemini | 43 | 136 | 43 | 136 | 引用の再掲 |
ChatGPT | 34 | 114 | 0 | 0 | 記録なし |
条件別推薦実験(2026年8月11日)の回答を引用軸で集計。引用=回答に引用として示されたURL、取得=回答生成の過程で読まれたURL。Geminiは取得URLが引用URLの再掲であり、差分が構造的にゼロになる。ChatGPTは取得URLを全試行で記録しない(API仕様)。この表の行同士を比較してはいけない。取得方式が違うため、AI間の大小はAIの性質を示さない。
Claudeは、読んだURLを記録する。取得は80ドメイン、引用は51ドメインだった。単純な差は29ドメインだが、引用に現れたドメインがすべて取得記録に含まれるかどうかは検証していないため、この数をそのまま「読まれたが引用に出なかったサイトの数」と読むことはできない。言えるのは、取得の層と引用の層が別のデータとして観測できる、というところまでである。
Geminiは、取得URLとして引用URLと同じものを返す。読んだが引用しなかったサイトがあったとしても、この方式では観測できない。差分がゼロなのは、差分が存在しないからではなく、差分を写す仕組みがないからである。
ChatGPTは、読んだURLを記録しない。取得の列が0なのは、何も読んでいないという意味ではない。観測の窓が最初から閉じている。
つまり「読まれたが引用されなかった層」を観測できるのは、この3つではClaudeだけである。表1の取得の列をAI間で見比べて「ChatGPTは読んでいない」と結論すれば、それは記録仕様を性質と取り違えた誤りになる。私たちはこの取り違えを一度やりかけた。
同じAIの中でも、引用で数えるか取得で数えるかで順位が入れ替わった
では、記録が完全なClaudeの中だけで見ればよいかというと、そこにも罠がある。同じ回答セットを、引用ベースで数えた場合と取得ベースで数えた場合で、ドメインの順位が入れ替わるのである。
表2 Claudeにおける上位ドメインの順位(引用ベース vs 取得ベース)
ドメイン | 引用 件数 | 引用 順位 | 取得 件数 | 取得 順位 |
64 | 1位 | 51 | 3位 | |
18 | 2位 | 54 | 2位 | |
17 | 3位 | 23 | 6位 | |
17 | 4位 | 54 | 1位 | |
12 | 5位 | 30 | 4位 | |
12 | 6位 | 21 | 7位 | |
10 | 7位 | 11 | 13位 | |
9 | 8位 | 7 | 18位 |
Claude単独・同一回答セット。単位は延べ件数。引用元ドメインは調査対象企業ではなく、AIが参照した情報源として実名で記載している。
引用ベースの1位はservice.manadic.comの64件だが、取得ベースでは3位に下がる。逆に、取得ベースの1位はkeysession.jpの54件で、引用ベースでは4位の17件にすぎない。読まれた回数と、引用として表に出た回数が、比例していない。
表2には、説明のつかない行もある。service.manadic.comとgrop.co.jpは、延べ件数で引用が取得を上回っている。1回の取得が回答内で複数回引用されれば延べでは逆転しうるが、それが実際の理由かはこの集計からは確かめられない。いずれにせよ、延べ件数の引用と取得は単純な差し引きができる関係にない。矛盾として記録しておく。
keysession.jpは54件読まれて17件しか引用に出ていない。多く読まれるが引用には選ばれにくいサイトと、取得を上回る件数の引用が数えられるサイトすらある、ということである。なぜその差が生まれるのかは、この集計からはわからない。
この2層の区別は、サイト運営者にとって意味が違う。「読まれているのに引用に出ない」と「そもそも読まれていない」では、次に打つ手が変わるはずだが、後者を判定できるのは取得を記録するAIに限られる。
順位の下側ではさらに動く。grop.co.jpは引用ベースで8位だが、取得ベースでは18位である。「AIによく引用されるサイト」のランキングは、どの層で数えたかを書かなければ、同じデータからでも別の表が作れてしまう。
GA4の流入数もクローラーのログも、この漏斗の別の断面である
実務の現場で「AI経由の数字」と呼ばれているものは、実は複数の別の測定である。GA4などのアクセス解析でのAI経由流入は、AIの回答を見た人間がリンクをクリックしてサイトに来た数を数えている。サーバーログでのAIクローラーの計測は、AIのボットがサイトを読みに来た回数を数えている。そして本稿の実測は、質問への回答の中で、取得と引用という2つの層を数えている。
この4つは同じ漏斗の別の断面で、クローラーのアクセスは取得の手前、GA4の流入は引用のさらに先(表示されたリンクがクリックされた後)に位置する。呼び名が似ていても、数えている場所が違う。
本稿が示した「引用で数えるか取得で数えるかで順位が入れ替わる」という現象は、この文脈に置き直すと一般化できる。断面が違えば順位は変わりうる。GA4の流入が多いサイトと、回答に引用されるサイトと、クローラーがよく読みに来るサイトは、同じ顔ぶれである保証がない。どの断面の数字なのかを確かめずに「AIでの引用が多い」と言うことはできない。ただし、断面をまたいだ実測比較(同一サイトでの流入数と引用数の対応など)は本稿では行っていない。
この構造は、他社の調査レポートを読むときの確認点になる
AI検索やLLMOの調査レポートには、「AI別の引用数比較」や「引用されやすいサイトランキング」がよく載っている。本稿の観測は、それらを読むときの確認点を与える。
第一に、AI間の引用数を比較している場合、取得方式が統一されているかを確認する。方式が違うAIの数字を並べた比較は、方式の違いを測っているにすぎない。
第二に、ランキングがどの断面の数字かを確認する。引用か、取得か、クローラーのアクセスか、流入か。同じデータでも順位が入れ替わる以上、どこで数えたかが書かれていないランキングは解釈できない。
第三に、「このAIは引用しない」「このサイトは読まれていない」という不在の主張には、観測できなかっただけではないかを疑う。記録されないことと、起きていないことは別である。
第四に、自社で測る場合、AI間の引用比較はあきらめて、AIごとに別の表で持つ。私たちも横断の合算と比較を禁止事項にしている。
この調査でわかっていないこと
順位が入れ替わる理由はわかっていない。読まれやすさと引用されやすさの差が、サイトの構造によるのか、内容によるのか、モデルの選択規則によるのかは測っていない。
引用と推薦の関係は本稿の範囲外である。多く引用されるドメインの企業が多く推薦されるかどうかは、本稿のデータからは何も言えない。引用軸と推薦軸は別の観測であり、私たちは両者を同じ表に置かないことをルールにしている。
ChatGPTとGeminiの「読まれたが引用されなかった層」は観測できていない。存在しないのではなく、現在の取得方式では見えない。この層の大きさはClaudeでしか測れておらず、他の2つで同様の乖離があるかは不明である。
1領域・1実験の集計である。人材教育・組織開発領域の条件別推薦実験の回答に基づいており、他領域や他の実験で同じ順位逆転が起きるかは未検証である。
当初の抽出バイアス検証報告書は再発見できていない。本稿の数値は原データからの再集計であり、過去の報告書の記述との照合はできていない。この点も含めて、本稿は現時点で再現できる数値のみで構成している。
GA4等の流入数やクローラーのログとの実測比較は行っていない。本稿で整理した4つの断面のうち、実測したのは取得と引用の2つだけであり、断面間の対応関係(引用が多いサイトは流入も多いのか等)は測っていない。
2026年8月時点の各モデルの仕様である。取得URLの記録仕様はAPIの仕様変更で変わりうる。
調査概要
表3 本稿で用いた集計
集計 | 実施日 | 元データ | 軸 | 判定 |
引用軸|取得方式とドメイン順位 | 2026-08-14 | 条件別推薦実験(2026-08-11、条件語6種×3AI×各3回=54試行+パイロット6)の回答 | 引用軸 | 機械集計 |
本稿の数値はすべて引用軸であり、推薦軸の数値(記述型・登場試行数など)とは同一の表・グラフに混在させていない。AI横断の合算・比較は取得方式が異なるため行っていない。
判定基準の版と対象範囲:本稿が扱うのは引用・取得URLのドメイン集計のみである。5記述型の判定基準(v2.1/v2.2)は本稿では用いていない。引用元ドメインは、調査対象企業ではなくAIが参照した情報源として実名で記載した。元データの条件別推薦実験は、対象企業を事前指定しない一般設計であり、クライアント事業との紐づきはない。

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マーケティング・ファシリテーター
株式会社トランジットデザイン代表。 マーケティング伴走、採用・組織のストーリー設計、コンテンツ企画・制作を通じて、企業や地域、組織の見えにくい価値を言語化し、伝わるかたちへ整えることを仕事にしている。事業や組織の背景にある文脈を読み解き、営業・採用・発信などの接点をつなぎながら、実行につながる構造をつくることを得意としている。
まずは、現状を整理するところから。
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